餃子ノ手記

おしゃべりより、活字がお好き

19.11.13

 

 

ハサミ。

鍾乳洞のような冷たさに、

青い洞窟。

天井は高い。

前にも一度来たことがある、

誰かに話した記憶がある。

 

空間がざっくりと分けられている。

右奥の空洞には、微かに白い光が見えて

洞窟を青く感じさせているのかもしれない。

 

湿っぽい。

水滴が落ちるような音が、聞こえてきそう

聞こえているかもしれない。

 

左奥には、その先の空間を隠すように

大きな布が天井から垂れていて、

その先から煙か、霧か、湯気が

ゆらゆらと湿気に混じって揺れている。

 

足元を見ると、

白い、入浴剤を入れたような水が

足首あたりまであって、指先が見えない。

 

私はその布の先に、進まなければいけないのだが、

とても用心深く、足を動かす

 

おそらくその水は、

生温くて、白いモヤの正体が

このお湯から上がる湯気であることが

わかった、

 

進むと左右にタイルが見える。

 

そのタイルも青白く、

どっかからの光を少し反射している

 

足を動かすごとに、

水の音だけが、反響している

 

前にも一度、来たことがある

 

ハサミを踏んでしまわないように、

私は少しずつ、少しずつ

足を上げて、下ろす。上げて、下ろす。

 

 

来た道であるほうから、

私を呼ぶ声がする。

準備はまだか、聞いている。

 

ちょっと待って、と言いながら

じゃぶじゃぶと湯気の奥に進み、

少しヌルつくタイルを右手でなぞり、

目を凝らし、ハサミの先端の反射を探す。

 

足の裏が、ふやけてきたのかもしれない、

地面のゴツゴツが、ヒリヒリに変わる。

 

 

紐が垂れていて、洗濯バサミが絡まっている、

その横には、入り口にも見たような布が

隅っこに垂れている。

 

 

目線と同じ高さの、タイルの壁があり

その上に、カミソリの替え刃が光っている。

私はそれを回収し、さらに奥へ進む

 

後ろを振り返ると、真っ白で何も見えない、

もう湯気の中に包まれているのだ

 

 

さらに奥へ進む、

心細いからか、その先にいる誰かを呼びながら

 

足元のお湯が、冷たくなっている

湯気の粒が、薄くなっている

 

寒い

私は足元の白に、沈む反射を

持ち上げる。

 

少し段差になっていて、

ぬるついた地面になる

 

そのさらに奥にいる、

家族か友達か、裸のそれを呼びとめて

戻るように言う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

起床

19.11.13

ギョウコ